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未来を変える気づきを育む「水圏環境リテラシー」

2022.10.11

東京湾と周辺河川では「水圏環境リテラシー」を高めるための動きがあるという。「水圏環境リテラシー」とは何なのか?「水圏環境リテラシー」向上を提唱する東京海洋大学の佐々木剛教授と、教授と一緒に海洋教育プログラム「TOKYO sea school」を実施する株式会社ZEAL代表取締役社長の平野拓身さんに話を聞いた。

「水圏環境リテラシー」を高めるとは、どういうことでしょうか?
佐々木教授地球は「大気圏・陸圏・水圏」の三つに分けられますが、川、海、湖など、水がある場所はすべて水圏に入ります。私たちの暮らしに欠かせない水の価値や水辺の環境について、もっと意識を向けてもらいたいと思っています。それが「水圏環境リテラシー」を高めるということです。 リテラシーとは「自ら進んで獲得した理解力、活用する能力」のこと。そこには体験+知識が必要です。私は東京都港区の中学校で運河学習を行なっていますが、子どもたちが水辺に興味を抱いて体験し、気づきを得て、学びを深めていけるプログラムであることが大切だと思っています。
これまでも日本の学校では、臨海学校など、子どもたちが水辺に親しむための教育が行われてきたと思います。何が違うのでしょうか?
佐々木教授水辺に親しむためのこれまでの日本の教育は、海や川などに出向いて行われるものでした。しかし、人は水がないと生きていけません。つまり、人が暮らす町にはたいてい何らかの水圏があるものです。そこで、町を流れる運河のような身近な水圏に着目して体験学習を行うことで、子どもたちに水のありがたさ、水圏環境を守る大切さに気づいてもらいたいと思っています。この気づきは、自分が暮らす地域に愛着を抱くことにもつながります。
「水圏環境リテラシー」を高めることで得られる気づきや学びは、子どもたちにどんな変化を与えるでしょうか?
佐々木教授例えば東京湾や周辺の川、運河では、今でもウナギやハゼがいます。身近な水辺での体験を通して子どもたちに気づきが生まれ、「この水辺をもっときれいにしなければ・・・」という思いが生まれてきます。生まれ育った場所は誰にとってもふるさとであり、原体験の場所。そこに愛着を抱いて生活することは、子どもたちが環境問題を自分事として考える大きなエネルギーになるのです。
株式会社ZEALは佐々木教授と共同研究を行なっていますが、「TOKYO Sea School」実施の背景を教えてください。
平野氏(ZEAL)日本は海に囲まれていますが、海について学ぶ機会がとても少ないと常々感じていました。そこで大人も子どもも、もっと海と関わる機会があればと思い、ZEALでは20年ほど前からさまざまな海洋教育プログラムを実施してきました。数年前に佐々木教授とご縁があり、共同研究の一環として、海洋教育ブログラム『TOKYO Sea School』を始めました。
「TOKYO Sea School」は、どのようなプログラムですか? また、そこからどのような気づきや学びを期待していますか?
平野氏(ZEAL)「TOKYO Sea School」は、海洋プラスチック問題や自然環境への影響を学ぶために、浮遊ゴミ回収や水質調査をしながら、東京湾と周辺河川をクルーズするというものです。ただし環境問題だけに注目するのではなく、水中の生きものや渡り鳥の観察など、東京湾と周辺の水辺の楽しさ、素晴らしさも伝えることを心がけています。船に乗って海や河川から陸を眺めると、いつもと違う発見があります。クルーズを楽しみながら東京の海や河川について学び、「水圏環境リテラシー」を高めてもらいたいと思っています。「TOKYO Sea School」が、子どもたちが東京湾に興味をもつきっかけとなって、海や河川の未来を真剣に考えるようになってくれたら嬉しいですね」

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