Compass

中・高校生の子を持つ保護者の皆さまへ
~溢れる情報をチャンスに変えよう

2026.01.13

現代社会は、まさに情報社会。
年齢も社会的地位にも左右されることなく誰もが、いつでもどこでも必要な情報をカンタンに入手できるメリットがある現代。それゆえに、大きな差もなく競争が激化するデメリットもある現代。
情報が溢れる社会に生きることは未来を模索する中・高校生にとっては不安も多いことだろう。だが、一つひとつの情報への向き合い方を知っていれば、何ら心配することはないだろうと脳科学者であり東北大学加齢医学研究所教授・瀧靖之先生は言う。
今、社会は変わり始めている。

今回は「未来を模索する中・高校生に向けた脳科学者 瀧靖之先生」からのメッセージを、保護者の皆さまにも、情報社会を生きる子どもと向き合ううえで大切だと思うことをお届けする。
現代において、生まれたときからインターネット環境が身近にある中・高校生の世代は、日常的に大量の情報に触れている。「溢れる情報から何を選択すべきなのか。社会が急速に変化している今こそチャンスだ」と語る瀧先生。その真意とは何か。
情報過多な時代の中で、悩み、迷うであろう中・高校生にとって、これからの時代を生き抜くための大きなヒントを、前回は示していたはずだ。
そして今回は、保護者の方々に伝えたいことを挙げてもらった。

保護者に伝えたい5つのこと

保護者の皆さまに向けてお話ししたいと思います。
中・高校生のお子さんを持つご家庭に、少しでも子育てのヒントになれば嬉しいと考えています。

先述の通り、現代社会は情報社会でもあります。
子どもたちはインターネット環境から多くの知識を享受できる一方で、入手した情報に影響を受けやすく、自分が持っていたささやかな自信はアッという間に砕かれ、自信をなくし、自己肯定感を下げてしまう、そんな可能性が今の社会にはあるように感じています。激化する競争に晒され、常にプレッシャーを感じている子どもも多くいることでしょう。

このような説明をすると子育てに不安を感じる方もいるかと思いますが、これらの状況にうまく対処するためにも、現代社会が子どもたちに与えるメリットとデメリットについて保護者の皆さまが理解しておくことは大切ではないかと思うのです。

その上で保護者の皆さまに私からお伝えしたいのは、以下の5つです。

● 自己肯定感の高い親になろう。
● ナンバーワンよりオンリーワン。
● 子どもを褒める。口に出して伝える。
● 時には子どもを「その気」にさせたって良い。
● 1日1回は家族で一緒にご飯を食べよう。


溢れる情報と激化する競争の中で、子どもの自己肯定感がいつの間にか下がってしまう可能性が現代社会にはあるように思います。しかし、常にそばにいる保護者が自己肯定感をしっかりと持っていれば、子どもが自分を見失ってしまう可能性は低くなるのではないでしょう。
子どもは保護者の背中を見て育つと私は思っています。保護者が社会に対して後ろ向きな感情を持っていれば、子どもは社会に希望を持てなくなるかもしれませんし、保護者が自分を肯定できなければ、子どももまた、自分を肯定する方法がわからなくなってしまうと思うのです。
情報に翻弄されて自己肯定感を下げがちな子どもに、「あなたは誰よりも素晴らしい」という姿勢を保護者が率先して伝えてあげることが大切ではないでしょうか。そのためにも、保護者自身が自分を肯定し、自己肯定感を常に高く保っておく必要ではないかと思うのです。

競争社会の中でプレッシャーを感じている子どもたちには、「ナンバーワンではなくオンリーワン」を目指すことの大切さを伝えてあげることも良いかなと思っています。
誰もが同様の情報を享受できる現代社会の中では飛び抜けた差がつきにくく、どんな物事においてもナンバーワンを目指すことは簡単ではなくなったように思います。
しかし「一番優れている」ことにこだわらなければ、得意な科目がある、周囲より足が速い、ピアノが上手、友達に優しいなど、どの子どもにも良いところが必ずあるのではないでしょうか。これらの良いところを組み合わせて考えれば、それはもう、その子どもだけが持っているオンリーワンの魅力と言えるでしょう。
差がつきにくい競争社会の中で目指すべきは「ナンバーワンではなく、オンリーワンであることだ」と保護者が教えてあげれば、子どもたちは不要なプレッシャーから解放され、生き生きとした毎日を過ごすことができるのではないかと思っています。

また、照れずに子どもを褒めることも大切ですね。
思春期に入る中・高校生の子どもたちとの距離の取り方は保護者には難しいものですが、自己肯定感が下がりがちな年ごろの子どもに対しては、保護者は照れずにしっかりと褒めてあげることも必要かなと思うのです。
子どもは自分の良さを自分で分かっていないことが多いはずですよね。
しかし、保護者の方でしたら、些細なことでも子どもの良さを見つけてあげることができるのではないでしょうか。そして1度や2度ではなく、常日頃から何度も口に出して伝えてあげるとさらに良いかと思います。親の思いが子どもに伝わっている実感がなかなか持てないとしても、褒め続けてくださいね。褒められて悪い気になる子どもはいませんし、人を褒めることは保護者である皆さんのような大人の気持ちもきっと明るくしてくれるだろうと思っています。

それに保護者が褒めることで、子どもは「その気」になることだってあるかもしれません。勉強ができるとか、スポーツが得意とか、人に優しいとか、いい意味で「その気」になった経験が、未来を模索する子どものモチベーションになることもあるでしょう。
そして最後に、ぜひともお伝えしておきたいことがあります。

子どもと一緒にご飯を食べながら会話をしましょう。

昨今、共働き家庭も多く保護者の方々が帰宅する時間もバラバラで、さらには子どもが夜に塾に行く日などは、家族全員が一緒に夕飯を食べることも難しいかと思います。そうであれば朝ご飯だけはみんなで一緒に食べるとか、日曜日は家族全員で夕飯を共にするなど、ご家族のルールを決めてみてはいかがでしょうか。

インターネット環境でのコミュニケーションが日常となっている10代の子ども達は、昔と比べて周囲との「共感性」が下がってきていると言われています。文字でのコミュニケーションはできても、リアルなコミュニケーションが苦手だという子どもたちが増えていると感じます。しかし、どんなにテクノロジーが発展し、AIが世の中を動かす便利な時代になろうとも、人と人とのリアルなコミュニケーションは大切なものです。
親としては絶対に子どもに身につけて欲しい「力」ですよね。

子どもにとって家族で食事をすることは、相手の気持ちを推しはかり、共感スキルを高める最も簡単で効果的な行為だと私は思っています。
今日はどんなことがあったのか。それに対して何を感じたのか。家族で何気ない会話をするのも良いかなと思います。中・高校生くらいになると、子どもは家族との会話を面倒くさがるかもしれませんし、ろくに話もしないなんてこともあるかもしれません。それでも家族で食事をするという時間を大切にして欲しいと思います。この時間の積み重ねが、子どもの共感スキルを高めることに繋がっていくだろうと思っています。

情報が溢れる現代社会は子どもにとってデメリットも多く、子育てに苦労することも多いと思います。しかし、アイデアと行動力があれば大きなチャンスを掴むことができる時代になったことも事実です。

まずは照れずに子どもを褒める。一緒にご飯を食べながら会話する。

そんなところから始めてみると良いかもしれませんね。そして何よりも、ご自身の自己肯定感を高めることを忘れずに。子どもは親を見ているものです。保護者の自己肯定感が子どもの自己肯定感に影響を与える可能性があることを、心に留めておいてほしいと思っています。

私も中学生の息子を持つ父親です。
悩んだり迷ったりしながら、子どもと向き合っています。心配は尽きませんが、日々成長していく子どもから教えられることもありますし、人としての大きな魅力を感じ嬉しくなることもあります。子どもを思う気持ちは保護者であれば誰もが同じ、きっと皆さんとも共通するところがあるのではないかと思っています。
子どもたちが歩む未来が輝かしいものになるように、ぜひ一緒に子育てを楽しんでいきましょう。

瀧 靖之(たき やすゆき)
医師 医学博士 脳科学者
東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターのセンター長。東北大学加齢医学研究所教授。これまで脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIはこれまでに16万人にのぼる。『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)は10万部を超えるベストセラーに。ピアノ演奏やチョウの採集など多彩な趣味を持つ。一児の父。

取材編集:帆足泰子