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「情報収集、ライジャケ着用、スマホ携行」
これが海の安全、新常識!

2026.07.10

毎年夏になると起こってしまう海の事故。マリンレジャーにおける海の事故の多くは、海水浴場として指定されていない海岸(海水浴場以外の場所)で発生しているという。「自分たちは大丈夫」という過信、そして「離岸流」への知識不足など気の緩みや安全意識の欠如が海での事故を招いてしまうのだ。必要なのは事前の情報収集、ライフジャケット着用、そしてスマートフォン携行も海を安全に楽しむための新常識だ。
今回は、夏のレジャーシーズンを前に、海の安全に関する啓発活動を続ける海上保安庁に話をお聞きした。

海の事故は、なぜ夏に増えるのか

近年のマリンレジャーに伴う12歳未満の子どもの事故者数は、年間50〜80人程度を推移。令和7年(2025年)は48人で比較的少なかったが、死者数はわずかに上がっている。マリンレジャー中の事故予防への意識は少しずつ社会に浸透してきたように思われる一方で、事故に遭う子どもの人数も死者数もゼロではないという事実もある。
「マリンレジャー中の子どもの事故にはいくつかの傾向があります。事故の半数以上が遊泳中に起こっており、発生時期は夏休みがある7〜8月が多く、12歳未満の年齢別では7歳の子どもの事故が多い。そして事故の大半が海水浴場以外の場所で起こっているということです」

マリンレジャーに伴う事故について教えていただいたのは、海上保安庁 交通部 安全対策課 海難防止対策官 田中祐雅さんだ。田中さんによれば、「夏休み時期の7〜8月はマリンレジャーでの事故が他月と比較して突出して多くなる」とのことだ。
本稿でいうマリンレジャーとは、海水浴場での遊泳の他にモーターボートやSUP(スタンドアップパドルボート)、カヌー、スノーケリングなども含まれている。最近では水流を噴射して浮遊するジェットブレードや空飛ぶサーフィンともいわれるホバーボードなど新しいマリンスポーツも登場しており、多様化するマリンレジャーに合わせた安全意識のアップデートが求められている。

遊泳中の事故が磯遊びや釣りなどよりも多く発生していることが分かる。
海の事故は、夏休み時期とも重なる7〜8月が圧倒的に多い。

事故が多いのは「海水浴場以外の場所」

さまざまなデータの中でも田中さんが注目されているのは、7歳の子どもの事故が多い点だ。
「7歳というと小学生1〜2年生です。幼児から学校に通う年齢になり、自分一人で動き回るようになっていく年齢だと思います。しかし、海での安全意識が小学校低学年では未だしっかり身に付いているわけではありませんので、保護者の皆さんには『もう小学生だから』と油断せず、海辺では子どもから目を離さないように配慮してほしいと思います」

田中さんは、マリンレジャーに伴う海浜事故の大半が海水浴場以外の場所で起こっているという事実を知ってほしいとしながら、こう続けた。
「マリンレジャーに伴う海浜事故の約6割が指定された海水浴場以外の場所で起こっています。指定区域内の海水浴場ではライフセーバーがいる場合も多いのですが、区域外では目が届きません。遊泳者の方はおそらく悪気はないのでしょうが、遊泳禁止の場所は波が不規則に変わる場所だったり流れが早かったり、遊泳禁止にしている理由があるのです。マリンレジャーは必ず指定された海水浴場で楽しんでほしいと思います」

小学生になって自由に動き回ることが増えると、事故の可能性も高まるので注意したい。
マリンレジャーに伴う海浜事故の約6割が海水浴場以外で発生している。必ず指定された場所で遊泳を楽しむようにしたい。

海の安全は“自分で調べる”時代へ

私たちがマリンレジャーを楽しむ際、どのような心掛けが必要なのだろうか。
「例えば遊園地に行くと、アトラクションごとに運行中止の基準が決まっていますよね。雨の日は運行しないとか、風が強ければ運行を取りやめるとか、そこには明確な基準があります。スタッフがシートベルトを確認したり、運行中のスマートフォン利用を注意したりもしてくれます。しかし、マリンレジャーでは安全は個人の知識に左右されるところがあります。安全のための情報は自ら収集しておく必要があるのです」

確かに海辺のアクティビティを楽しむために、誰かが一人ひとりの安全を細かく確認してくれるわけではない。どこで遊泳するべきか、何を準備しておくべきか、私たちは事前に自ら情報を取っておく必要がある。
田中さんは海の安全知識は「ゼロとイチでは大違い」だと言う。
「これから行こうとしている海辺の天気予報や安全に楽しめる場所の確認、予定しているマリンレジャーに合わせてどのような装備を準備すべきかを事前に調べておくことが必要です。大事なことは海の安全について知っておこうとする意識です。海という自然と向き合うリスクについて事前に少しでも考えたかどうかは、万が一というときに慌てることなく対処できる行動につながると思います」

家族で学びたい「海の安全知識」

海上保安庁が運営するウォーターアクティビティを安全に楽しむための総合安全情報サイト「ウォーターセーフティガイド」。海に出かける際は事前にチェックしたい。
海上保安庁では、ウォーターアクティビティを安全に楽しむための総合安全情報サイト「ウォーターセーフティガイド」を運営している。海水浴やSUP、スノーケリング、釣りなどを楽しみたい人に向けて安全への意識や事故防止法、緊急時の対処法などに関する情報を発信している。
「明日、海に行くぞ! というときに、お子さんと一緒にご家族でウォーターセーフティガイドを見てください。マリンアクティビティごとに必要な情報を分かりやすく発信していますので、安全について事前に確認しておくといいでしょう。流し見でも構いません。親子で安全について知っておこうという意識が大切なのです」
子どもを連れて一緒に海のレジャーを楽しむ場合、海辺での子どもの安全について気になる方々も多いはず。ぜひ参考にしていただきたい。

親だけでなく子どもも一緒に海辺での安全に関する情報を確認することは、とても大切なことだ。やはり安全について、自らが「意識する」ことが何より重要なのだろう。

ライフジャケットは“子どもだけ”のものではない

「親子で実施してほしい安全対策がもう1つあります」と田中さんは続ける。
「ライフジャケットを着用する際には、ベルトに緩みがないか、体にフィットしているかなどを親子でチェックし合ってください。お互いにチェックすることで、安全意識も高まります」

子どもにはライフジャケットを着用させても、「親(大人)は着用していない」ということはないだろうか。海浜事故は、決して子どもだけの問題ではない。
子どもたちにとって、親は安全行動の見本となる存在だ。子どもは大人の行動を見て学ぶ。だからこそ、大人自身も安全への意識をしっかりと持ち、率先してライフジャケットを着用する姿勢を見せることが大切なのだろう。

「先日、夏を楽しむアイテムとして水着や花火、水鉄砲などと一緒にライフジャケットを販売している量販店を見かけました。海の安全対策を啓発してきた海上保安庁としては、とても嬉しく思いました。ただ、販売しているライフジャケットは子ども用だけでした。海辺でライフジャケットが必要なのは子どもだけではありません。大人も子どもも等しく海の安全を意識することが社会の常識になってほしいと思っています」

離岸流とは海岸に打ち寄せた波が沖合に戻ろうとする際に発生する強い流れのこと。この流れに乗ってしまうと泳ぎが上手な人でも陸に戻るのは難しいと言われている。ただ、海に行く前に離岸流の仕組みを知っておけば、万が一の時も冷静に対処できるはずだ。

ライフジャケット選びで知っておきたいこと

田中さんは、ライフジャケットを選ぶ際には「認証マークの存在を知っておいてほしい」と話す。ライフジャケットにはさまざまな認証制度があり分かりづらい面もあるが、認証マークは第三者機関によって一定の安全基準を満たしていることを示すものだ。購入時の重要な目安になる。

またマリンアクティビティごとに適したライフジャケットがあるため、購入の際にはその点も注意してほしいと田中さんはアドバイスする。量販店などで販売されているライフジャケットは一般的な遊泳用がほとんどなのだろうが、インターネットで購入する際は、どのようなマリンアクティビティに適したライフジャケットなのか、しっかりと確認したい。

海辺ではスマートフォン携行も“安全装備”になる

田中さんは、ライフジャケットに加えて、防水パックに入れたスマートフォンの携行も推奨する。
「海浜事故は溺水だけでなく、沖に流されて陸岸に戻れなくなる事故も多く発生しています。流されてしまったときに誰かに連絡できるスマートフォンを持っていることは大きな安心材料になります」
最近では、防水ケースに入れて海中撮影を楽しむ人も多い。
「映え写真のためだけではなく、安全と安心のためにも、海辺ではスマートフォンを携行してほしいと思います」

事前の情報収集、ライフジャケット着用、スマホ携行。
これからは、この3つが「海の安全の常識」になりそうだ。

マリンレジャーを楽しむとき、ライフジャケット着用はもちろん、スマートフォンを防水パックに入れて携行することも忘れないでおきたい。

海をもっと楽しむために、安全を知る

「自分たちは大丈夫。そんなちょっとした気の緩みが海の事故につながります。安全への備えは、まず大切な人を思い浮かべることから始めてください。その人が海で事故に遭ったら、どんな気持ちになるでしょうか。だからこそ、事前に家族一緒にしっかりと情報を得るように心掛けてください。安全への意識を忘れずに、海の雄大さ、素晴らしさを思いっきり楽しんでほしいと思います」

海上保安庁では、「潜水士」計137人、「機動救難士」計90人、「特殊救難隊」6隊 計41人が海難救助のプロフェッショナル(補足1)として活動を行っている。しかし、海に囲まれた日本全国の沿岸域・沖合を海上保安庁だけでカバーすることは難しいため、警察などの関係機関や日本ライフセービング協会、日本水難救済会(補足2)などと連携し、海の事故に迅速に対応できるようにしている。
「海での死亡事故を減らす」という強い思いで命を救うことに全力を尽くしてくださる人たちがいることに改めて感謝したい。そして、多くの海の事故を見てきた彼らが啓発する海の安全対策について、私たちは真摯に耳を傾けるべきだろう。

安全への備えは、自然を遠ざけるためのものではない。海の楽しさや学びを、より安心して味わうための準備なのだ。海は本来、人に多くの発見や感動を与えてくれる場所である。
だからこそ、安全への意識を持ちながら、自然と向き合い、その魅力を思い切り楽しんでほしい。


補足1) 潜水士は潜水技術を必要とする海難救助などを行い、機動救難士はヘリコプターと連携した吊上げ救助などを行う。特殊救難隊は「海難救助の最後の砦」ともいわれる部隊で、高度な知識・技術を必要とする特殊海難における人命・財産の救助を行う。人数は2026年5月現在。

補足2) 日本水難救済会(マリン・レスキュー・ジャパン)とは、海で遭難した人や船の救助を行う民間ボランティア救助団体である。全国約1300カ所以上の救難所に所属する約5万人の救助員(漁業者など)が、海上保安庁と連携して人命救助にあたっている。

資料・画像提供/海上保安庁
取材編集・撮影/帆足泰子
参考/ウォーターセーフティガイド

田中祐雅(たなか ゆうま)
海上保安庁 交通部 安全対策課 海難防止対策官。中城海上保安部警備救難課長、第二管区海上保安本部警備救難部救難課長などを経て現職。海洋での事故を減らすため、海の安全に関する啓発活動を行う。一緒に写真に写っているのは海上保安庁のイメージキャラクター、タテゴトアザラシの「うみまる」だ。