Story

#011 野添百華さん
「スマホを手放し、自分と向き合う贅沢な時間。」

2025.05.01

サウナインフルエンサー野添百華と過ごす、心のリセットタイム。

サウナ系インフルエンサーとして全国のサウナ情報を発信し、フリーランスのモデルとしても活躍する野添百華さんと訪れたのは、神流川とその源流が流れる群馬県上野村。関東一の清流で、イワナやヤマメ、鮎など多くの渓流魚が棲息する。

年間に訪れる釣り人の数は数万を超え、彼女もくるのは2回目だという。どこか夏休みの冒険を感じさせるこの場所で、彼女が大切にしている「自分と向き合う時間」を通じて、心のリセット方法を考えてみる。

サウナとの出会いがもたらした変化

「最初はサウナなんて暑すぎて苦手でした。水風呂も冷たすぎて、何で入るのかまったくわからなくて」と笑う野添さん。そんな彼女の印象が変わったのは、あるとき当時の彼から「整い方」を教えてもらったのがきっかけだった。

初めて行ったのは大磯プリンスホテルの『スパウェーブ』のサウナ。サウナと水風呂はセットだから、と勧められて覚悟をきめて水風呂に入る。外気浴するためのリラックスチェアで海を眺めていると、ふと不思議な感覚に包まれた。

「景色が揺れて、体が下に落ちていくような感じ。疲れがすべて流れていくようで、それが初めての『ととのい』でした」

しかし、その時はまだ完全に理解できたわけではなく、後日ひとりで訪れた東京中野の銭湯「松本湯」で、本当の意味でサウナの魅力に気づく。

「松本湯はサウナの温度と湿度、水風呂の深さと温度が自分にぴったりで、初めて100%整った感覚を得られました。そこからサウナが大好きになりました。96度のサウナと15度くらいの水風呂セットがいまもお気に入りです。」

プライベートはもちろん、PRや撮影の仕事でもサウナに入ることが多く、多い時で週5~6回、少なくとも週2回はサウナを楽しんでいる。生活パターンだけでなく、体の変化や考え方の癖も大きく変わったそう。

「サウナにハマってから、びっくりすることに悩んだり落ち込んだりすることがほとんどなくなりました。元々不眠症気味だったのも改善されて、夜はスッと眠れるように。末端冷え性も治って、体が元気になった感じがします」

「あとはマイナスなことをプラスに変換するようになりました。昔は結構ネガティブだったんですが、いまは雨の日でも『ふだん行かない映画デートに行けるね』って前向きに考えられるようになったんです。サウナ仲間はみんな明るい人が多いですね。サウナを通じて、自分も前向きになれたのは大きな変化です」

サウナで整うことで分泌されるセロトニンが、そのポジティブさを支えているのかもしれない。一方で意外なことに、サウナのなかではボーッとしたりのんびりするのではなく、真剣に仕事のことや悩み事を考える時間にしているそう。

「サウナは8分間とか時間がきまっているので、そのなかで考えをまとめて、水風呂ですべてを流す感じです。寝る前だとタイムリミットがないから、一生考え続けちゃうんですよね。でもサウナだとちょうどいい区切りをつけられるんです」

サウナと釣り、共通する「自分だけの世界」

幼少期から父親と一緒に釣りを楽しんでいた野添さん。山口県の祖母の家に帰省するたびに、堤防や岩場で海釣りをしていた。トラハゼを釣り、祖母が唐揚げや南蛮漬けにしてくれる。おばあちゃんの味が何よりの楽しみだった。

大人になってからも、年に1回は友人たちと川釣りをしたり、船を借りて海釣りに行ったりしている。負けず嫌いな性格から、絶対に釣り上げたいとねばることが多いという。

「釣りをしながら、魚は何を考えているのかなって思います。釣れなくなったり、ルアーに慣れてきたり、魚って頭がいいんですよね。それに対抗してどうやったら釣れるかを考えるのが楽しいんです」

夏とはいえ神流川の源流は冷たく、徐々に足の冷えを感じる時もある。しかしこの日も投げるポイントやルアーを変えながら、じっくりと魚との対話と試行錯誤を楽しんでいるようだった。

サウナと釣り、一見異なる趣味のようだが、野添さんにとっては共通点がある。

「どちらも自分の世界に浸れる時間なんです。サウナでは深く考え事をして、水風呂でリセットする。釣りでは魚との心理戦に集中する。ふだんはインスタグラムの投稿やチェックに追われているので、デジタルデトックスにもなります」

せっかちな性格の彼女にとって、サウナも釣りも余計なことを考えずに集中できる貴重な時間。スマートフォンから離れて、自分だけの時間を過ごすためのツールにもなる。

自分のスタイルを追求する

体調や気分に合わせて、サウナの入り方を変えるのも彼女のこだわりだ。体調が良く、気合を入れたい日は高温でしっかりと汗を流す。逆に疲れている日は、湿度が高く体に負担の少ないサウナを選ぶ。まるで自分に合った薬を処方するように、その日の自分に最適なサウナをセレクトする。

今回は川で水風呂をする「アウトドアサウナ」スタイルだ。

「川を水風呂代わりにすると、流れがあるから体がしっかり冷えて整いやすいんです。汗を流さずにそのまま入れるのも魅力ですね。さっき釣りをしていた時も思ったけれど、マイナスイオンを感じながら、都会では吸えない空気を吸ってリフレッシュするのが気持ちいいです。」

サウナ上がりには流した汗の分、しっかりと塩分補給。炭火で焼いた鮎の塩焼きを頬張りながら自然のなかで過ごす時間が、日常からの解放と新たなエネルギーをもたらしてくれる。

「サウナも釣りも、ライフスタイルに合わせてずっと続けていきたいですね。自分をリセットできる大切な時間なので」

そう語る彼女の表情は、充実感に満ちている。自分のスタイルを大切にし、自然と向き合いながら過ごす時間。それが野添百華さんの生き方そのものだ。


■プロフィール|野添 百華(のぞえ もか)

東京都在住のサウナ系インフルエンサー・フリーランスモデル。国内外の旅行が趣味で、おすすめのサウナスポットやサウナを通じて得たポジティブな生き方を発信し、多くの人々に影響を与えている。

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Text by Fuumi Mori
Photograph by Sean Hatanaka

Storyとは「ライフタイムスポーツを楽しむ人たちの物語」

私には私の、あなたにはあなたの。スポーツの楽しみ方は人それぞれ。
⾃然の中で⾝体を動かすライフタイムスポーツを楽しみながら、人生を彩り豊かに過ごしている方は活力があり、魅力にあふれています。 その方たちは決してプロばかりではありません。
このコンテンツ「Story」では様々な楽しみ方で、自然とスポーツとともに日々を過ごしている人たちを取材し、ライフタイムスポーツの魅力とは何かをコンテンツを通して皆さんと一緒に感じていきたいと思っています。